エンジニアのかおるが綴る日常
僕がまだ穢れを知らない頃のお話。
たぶん3歳か4歳ぐらいかな。2歳ではないだろう。いや2歳かもしれない。まぁあまり重要ではないな。
父と母、祖母とぼく。妹が生まれて間もない頃だと思う。
5人か6人で暮らしていた。
祖母のことは「おばちゃ」と愛称で呼んでいた(というかまだ呼んでいる)が、調査したところによると「おばあちゃん」のことは「おばちゃ」と呼ぶのがこの辺では普通だったらしい。
この辺=青森県船沢村近辺。
以後「おばちゃ」で統一。
おばちゃはよくぼくの面倒を見てくれたり遊んでくれたりしていた。
一緒に寝ておっぱいを触っていた記憶もあるがそれはまた別のお話。
うんこの方へ進もう。
え!?おっぱいがいい?
そりゃうんこよりおっぱいが断然いいに決まってるが残念ながら今回はうんこの話なのである。
ぼくはよくおなかが痛くなっていたらしい。どういう感じかは自分では覚えていない。
お腹が痛いときなぜか玄関でうんこをしていた。
玄関といっても中ではなくて玄関をちょっと出たとこね。
余談:おなかが痛くない時ももしかしたら玄関でしていたかもと疑問がよぎったが、
便ツボにはまっている記憶もあるのでちゃんとトイレは使っていたようである。
もしかしたらそれがトラウマで外でするようになったのかもしらんけど。
それで、おなかが痛いというとおばちゃが決まって、
「ありゃ。ばばさしてあさいてらなー」(語尾は伸ばす)
とても優しい口調でそういうのである。
念のため訳「ありゃ。便が腸のあたりをチクチク刺しながら移動しているわねー」
ふーん。そういうものなのか。
そうなのだろう。
ぼくはよくそういう時のうんこを観察していた記憶がある。
もしかしたら観察するために玄関先で脱糞していたのかもしれない。
地面に落ちたうんこは2歳児でも簡単に観察することができる。
無数に毛の生えたうんこ。
うんこ自体は綺麗で細長い理想的な形。
表面を毛がびっしりと覆っている。
長さは3〜5ミリほどか。
毛というか棘かもしれない。
感触は確認していない。
賢明な読者の皆様は「なぜ触って正体を確認しないのだ?」
と疑問に思うだろう。
しかし聡明なぼくは!
うんこは汚いと!
2歳ですでに!
認識していたふしがある!
故に手では触らなかったのだと思う。
(匂いも覚えていないが多分臭かったと思う)
ただ尻穴の感じはよく覚えている。
ザラザラしたものが出てくる感覚だ。
たぶん自分の尻の感覚を信じれば、謎の毛は剛毛のようなものなのではないかとノスタルジックに思っている。
うんこから生えた毛が腸壁をチクチクしているから腹痛になるのだ。
剛毛ほどの強度がないと腸は刺せないだろう。
柔らかい産毛だと腸がくすぐったいだけだし、
逆に棘のように硬すぎると一通り尻穴まで血だらけである。
ほどほどのちょうど良い腹痛になるようになっているのだなぁ。
「ばばさしてあさいてらなー」
おばちゃがそう言った。
だからからなのか。
昔のうんこはそういうものなのか。
食べ物が原因かあるいは妖怪の仕業か。
ただの脳の作用か。
小さい子は見えないものが見えると聞いたことがある。
小さい頃は神様がいて不思議に夢を叶えてくれた。
叶えた結果が毛の生えたうんこ。
ぼくは毛のあるうんこを「またか」みたいな感じで眺めていた。
一回こっきりではなく、何度となく繰り返していた光景であった。
なのでぼくは「うん!今日も毛が生えてるな!」みたいな感情だった覚えがある。
初回のことは覚えていない。
一通り観察が終わるとぼくはうんこを放置して元の遊びに戻るのである。
そして遠くから聞こえる声。
「ありゃ。かおるまんだ玄関さばばしてら!」
あの時は当たり前のこと。
不思議なうんこの話。